伽羅通信

鎌倉十三仏巡り 八番札所 報国寺

竹寺の坐禅体験で自分を再発見

浄妙寺前でバスを降り滑川を渡ると、左右に山が迫り静かな谷戸の景観がひろがります。ゆるやかな坂を登った報国寺本堂前は、たくさんの参拝客でにぎわっていました。坐禅体験会は浄智寺に続いて二回目で、終わったら抹茶をいただこうと軽い気持ちで訪ねたものの、竹の庭で知られた鎌倉屈指の観光名所が、実は、とても厳しい修行の場であることを身をもって実感することになりました。

鎌倉十三仏霊場 八番札所 報国寺 ※写真の転載不可。

たとえハナミズが出ても、ピクリとも動くな!

静かな谷地の奥に広がる報国寺

静かな谷地の奥に広がる報国寺

迦葉堂から見る庭も美しい

迦葉堂から見る庭も美しい

参禅したのは厳寒如月のこと。坐禅道場の入口で靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、暖房のない板敷の堂内でコートと上着を脱ぎました。そして薄縁に坐った直後、ご住職のひとことで、自我まで脱ぐはめになりました。開口一番、「これから坐禅をしていただきます。開始の鐘がなったら、クシャミやハナミズが出ても、出しっぱなしで口を抑えるなんて一切必要なし。足が痛くてもゴソゴソ動かないでください」…。参加者は30名弱。厳しい口調に圧倒されたのか、皆、息をひそめた様子です。2列ずつ向かい合わせに坐って「調身」「調息」「調心」の説明を傾聴。身震いのする寒さで風邪気味の鼻も喉もムズムズ状態。そっと見渡すと、結跏趺坐はひとにぎり。ようやく半跏趺坐が組めたところで、第一回目の坐禅が始まりました。しんと静まった堂内を、警策を肩にしたご住職が、無音で巡警。足が痛い!セキが出そう!もうやめたい!…ひたすらの辛抱、我慢も、しばらくすると身体の痛みや心の乱れが静まって、一炷の約30分が終了。続けて二炷目に入ると「数息観」に集中できるようになり、やがて、自分は今、かけがえのない時を過ごしているという実感がこみあげてきました。

今に受け継ぐ禅の修行は、秋霜烈日

落雁に鎌倉彫のお盆でいただく抹茶

落雁に鎌倉彫のお盆でいただく抹茶

竹林の葉擦れと小滝の音で時を忘れる

竹林の葉擦れと小滝の音で時を忘れる

坐禅体験の後、本堂に移動してお釈迦様の誕生から入滅までの話を伺いました。何台ものガスストーブが赤い炎をたて、道場での寒さが嘘のよう。ご住職も打って変わって柔和な表情です。ここ報国寺は1334年に開かれました。ご本尊は釈迦如来。十三仏巡拝の第八番札所で、観世音菩薩(平等王)が祀られています。あたり一帯は川端康成が「山の音」に描写した静寂な谷戸で、たたずまいが大切に守られています。講話が終了し本堂を辞したあと、さて抹茶でくつろごうと気をゆるめた途端、透明な警策で背中をどやされた気がしました。たしかに、茅葺きの鐘楼や茶席のある竹の庭、四季折々の草花はすばらしい。でもそれらは報国寺の存在理由のほんの一部で、寺の真髄は「悟りを追求する厳しい修行にあるのだよ」、と…。

日曜坐禅会で、こころの旅の体感を

石の仕草ひとつにも意味がある

石の仕草ひとつにも意味がある

鎌倉では発掘調査が盛んで、遺物には将棋の駒もあり、武士が刀を振回わすだけではなかったことがわかります。遊びといえば、近頃、乗物で携帯ゲームに熱中する姿をよく見かけます。老若男女の一心不乱な様子は微笑ましい反面、コンピュータ相手に無理に時間を潰している感もいなめませんね。それにしても、坐禅会での収穫はたくさんありました。たとえば、姿勢を正し呼吸を整え、背中にのしかかる時間の重圧に耐えた達成感。そうして自分と正面から向きあっているうち、精神が身体を克服してセキも止まったのも驚きでした。ちょっぴりですが「心頭滅却すれば火も亦た涼し」(快川禅師)が理解できました。今度、鎌倉で坐禅にチャレンジしてみませんか。毎週開催される報国寺の日曜坐禅会では、ガイドブックには載っていない「こころの旅」が体感できるだけでなく、ひょっとすると参禅の旅先で、新しい自分が発見できるかもしれません。

禅用語

調身(ちょうしん)

静かな環境でリラックスし、姿勢を正して座禅を組み、身体を調える修行。体の緊張状態を取り除き、気の巡りをスムーズにする。

調息(ちょうそく)

身体を調えた後、深く安定した呼吸によって、呼吸を調える修行。腹式呼吸をゆっくりと行ってその回数を数える『数息(すそく)』を行い、集中力を養い自律神経を整える。

調心(ちょうしん)

身体と呼吸が調ったら、雑念から心を解放し、精神を調える修行。過剰な意識を排除することでストレスを取り除き、自律神経のバランスを取り戻す。

結跏趺坐
(けっかふざ)

左右の足の甲を反対の足のももの上で交差、足の裏が上を向くよう組む座法。

警策(けいさく)

警覚策励するための棒。

巡警(じゅんけい)

修行者の懈怠を戒めるため、警策を持って禅堂内を巡回すること。

一炷(いっしゅ)

線香一本が燃焼するまでの時間。通常約40分。

数息観(すそくかん)

呼吸を数えて精神を安定させる修養の方法。

報国寺(ほうこくじ)

住所

〒248-0003
鎌倉市浄明寺2-7-4

電話番号

0467-22-0762

拝観時間

午前9時~午後4時 年中無休

日曜坐禅会

午前8時~午前10時(集合時間:午前7時30分)

拝観料

200円

アクセス

鎌倉駅徒歩25分、または京急バス鎌倉駅発十二所方面行き「浄妙寺」下車3分

詳細

臨済宗建長寺派。孟宗の竹林で知られ「竹の寺」と呼ばれます。寺名は開基足利家時の法号「報国寺殿」に由来。1334年(建武元年)に開かれ、足利家および上杉家の菩提寺として繁栄しました。本尊は釈迦如来像、鎌倉十三仏第八番札所。永享の乱で敗れた足利持氏の嫡男義久(10歳)がこの寺で自刃し、足利公方が終焉しました。

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